プラズマ理工学の魅力~真理を極める基礎学術から暮らしを支える産業応用まで~

Interview No.18 山下 雄也
工学院

  • 山下雄也 東京工業大学工学院電気電子系電気電子コース 博士後期課程 在学中
  • 専門分野:
    • プラズマ理工学(プラズマ分光学、プラズマの原子分子物理)
    • 光学(照明工学、電磁光学、半導体光デバイス)
  • 出身:三重県
  • 趣味:登山

研究概要 / Research Outline

 プラズマ(気体中の放電現象)は、精密加工、とりわけ、半導体デバイス(太陽電池・メモリ・ICなど)加工に用いられています。設計通りの加工を行うには、プラズマの状態を計測し、その結果に応じてプラズマ処理装置を適切に制御する必要があります。しかしながら、プラズマを乱さず非接触に診断できる手法が、十分に研究されていません。そのため、総当たり実験により処理条件探索に行わざる得ない現状があります。これにより、半導体デバイス加工では、設計・作製において多大なコストが発生しています。さらには、さらなる超微細加工の障壁となっております。
 それら問題を解決する手段として、プラズマ計測への要請が高まっております。私は、プラズマが発する光を測定することでプラズマの状態を把握する「発光分光計測」の研究を行っております。

プラズマ理工学の魅力~真理を極める基礎学術から暮らしを支える産業応用まで~

 本記事では、私の専門分野であるプラズマ理工学の魅力についてお伝えしたいと考えております。

 プラズマ理工学は、プラズマ(電離気体、大雑把には気体中での放電現象)に関する学問分野の総称です。もっとも身近なプラズマの例として、雷があげられます。このほかにも、自然界では、太陽コロナ、流星など、様々にプラズマを見ることができます。
 一方、われわれの身の回りの暮らしに視点を移します。コンピュータや携帯電話といったほとんどの電化製品には、半導体集積回路(IC)が搭載されています。さらには、近年急速に普及が進んだ太陽電池も半導体デバイスの一種です。これら半導体デバイスの製造には、ナノメートルオーダーの超精密加工が必要であり、プラズマを用いた加工技術が用いられています。さらには、未来のエネルギーとして注目されている核融合炉は、超高温のプラズマを反応容器内に閉じ込めることにより地上に太陽の反応を実現します。

 ここからは、私がプラズマ理工学分野に身を投じるきっかけを交え、プラズマ理工学分野の特徴をお伝えします。私は高等専門学校(高専)出身でして、高専の卒業研究では、太陽電池に関する研究に携わりました。卒業と同時に大学に3年次編入しました。大学学部4年生における卒業研究では、光集積回路と呼ばれる、超高速光通信のための半導体デバイスの研究に携わっておりました。このように、高専・大学学部では、半導体光デバイスの研究に携わってきました。研究の過程で、デイバスの試作と評価の実験を繰り返していたため、デバイス作製の合理化を実現できないか?という疑問を持ったことがきっかけで、修士課程からはプラズマ理工学分野の研究に携わることとしました。

 私が思うプラズマ理工学分野の特徴をお伝えします。

(1) 学際分野であること
 プラズマ理工学は、電気電子工学、物理学(原子分子)、機械工学(流体力学、熱力学)、基礎化学、化学工学、材料工学、原子力工学、など多様な学問からなる学際分野であり、研究者の出身分野の多様性は、特筆すべき点です。昨今、プラズマを生物の育成助長や悪性腫瘍の死滅等に応用する試みがあり、生物工学、医学・歯学、農学分野出身の研究者も増えつつあります。また、今日の情報工学の飛躍的発展を背景として、プラズマ理工学分野においても、情報工学の知見にもとづく実験解析等が盛んであり、情報工学出身の研究者も増えつつあります。
 私のもう一つの専門分野は光学なのですが、プラズマ理工学分野に身を転じてからも、光学の知見を活かすことができることを実感するとともに、喜びを感じております。
このように、それぞれの研究者が出身分野の強みと発想そして個性を生かして活躍でき、さらに他分野との研究者と議論することで、研究の深化を図ることができることが、プラズマ理工学分野の魅力だと考えております。

(2) 基礎と応用が、密接相互に関わり合っている。
 プラズマの基礎的現象は、主に物理学と化学で記述されます。一方その応用先は、上記に記したように多様な分野に広がりを見せています。
応用諸分野においても、基礎現象の理解がなくして応用技術の向上は望めません。他方、基礎学術の研究においても、とりわけ実験研究においては、半導体デバイス等、プラズマ応用技術の恩恵をうけて研究が進展しています。
 まさに、プラズマ基礎とプラズマ応用は、車の両輪と言えます。これを反映するように、私が所属する応用物理学会では、学術界はもちろんのこと、産業界の研究者・技術者が、一丸となって活発な議論が展開されております。私自身の研究発表の際にも、専門分野を同じくする方々とは勿論、隣接する基礎分野や応用分野の方々とも、貴重な議論させていただいております。

メッセージ / Message

 星の数ほどある学術分野には、それぞれ魅力があると存じます。本記事では私が思うプラズマ理工学の魅力についてお伝えしました。みなさまのご参考になる点があれば幸いに存じます。