Interview No.9 野間 央 物質理工学院
東京工業大学物質理工学院応用化学系博士二年の野間央と申します.
趣味は,読書,美術館巡り,ゴルフ,フットサルなどいろんなことが好きです.
休日の過ごし方は,趣味にも書いた通り美術館巡りと外出することが多いです.
東工大の好きなところは,いろんなことに挑戦できる場があるところです.
Research Outline
私の研究は,潤滑油中における金属同士の摩擦機構の解明を行っている.潤滑油はベースオイルと添加剤から成り立っており,添加剤が摩擦によって金属と化学反応が起こり,金属表面にトライボフィルムという反応物を形成する.摩擦現象は,相対運動をしている二つの物体の接触部で起きるため,トライボフィルムの特徴が摩擦特性に影響を及ぼすと考えられる.また,摩擦特性に影響を及ぼすとされるトライボフィルムの特徴として,表面の粗さ,潤滑状態,荷重,温度など様々な要因が考えられる.そこで,多くのパラメータを扱うことに長けている機械学習を用いて,摩擦現象の解明に応用することを着想した.従って,複数の添加剤併用系で形成されたトライボフィルムの摩擦発現メカニズムを調査するために,摩擦試験により得られた実験データを用いて,機械学習による摩擦に関与する因子の関係性を評価している.
美術館が好きになったきっかけ
私の情報発信では,美術館の楽しみ方や自分が作った作品の紹介を行うことで,少しでもアートに興味を持っていただけたらと思います.そのテーマに行く前に,このパートでは,私がなぜアートに興味を持ったのかを話したいと思います.アートに興味を持ったきっかけはいくつかあったのですが,その中でも特に3つの出来事が印象的でした.
まず一つ目は,顕微鏡でものを観察していた時です.私は,研究で顕微鏡を使って観察を行うのですが,機械や人の手で丁寧に作られたものが細部にわたって均一に作られているものを見ると,技術革新の神秘と人間の努力の結晶を垣間見ることができ,とても感動したことを覚えています.しかし,これは,いわゆる工業製品であり,アート作品とは違うものと認識していました.
二つ目の出来事は,「13歳からのアート思考」という本を読んだ時です.これは,いくつかの有名なアート作品を見ながら,アート作品の見方を教えてくれる本となっております.この本の中で衝撃的だったことは,単に美しいのではなく,心を動かされるものがアート作品であると理解した時です.ここで,マルセル・デュシャンの「泉」というアート作品を紹介します,この作品は,一言でいうと男性用の便器です.男性用便器ということで,あまりきれいなものではありません.では,なぜこの作品がアート作品になったのかというと,この作品を見た人たちが心を動かされたからです.これまでアート作品はきれいなものでなければいけないと考えられてきました.しかし,デュシャンは果たしてアート作品をそのように定義してよいのかと疑問に感じ,この「泉」という作品を作ったのです.そして,「泉」を見る人たちはこの作品を通してアート作品とは本当は何かということを考えさせられるきっかけを作ってくれました.このように考えると,先に述べた顕微鏡見た規律正しい工業製品はある種のアート作品だといえることができるのではないでしょうか.
アートというものが私の中で広がりを見せてきた中で,最後の印象的な出来事はToTALで行われているEgakuという授業です.この授業では,絵を鑑賞するだけでなく,実際に自分で絵を描いてみるという授業です.今回の授業で絵を描くプロセスとしては,テーマに則して,自分は何を描きたいのか,絵の構成や色はどのようにすればいいのか,様々なことを考えながら,絵を完成させていくというものでした.この授業を通して,答えの無い所から自分なりに考え答えを導くことの難しさを痛感し,見るという観点だけではなくアーティストの視点から作品を見ることができるようになりました.このように,アート作品を見るものから,考えさせられるもの,そして,アーティスト目線で見ることができ,アート作品の面白さを改めて感じることができるようになりました.
Message
私は,現在摩擦メカニズムの解明というテーマで研究を進めている一方,他分野の研究についても興味を持ち,このプロジェクトは様々な体験ができるきっかけを作ってくれて,とても感謝しています.私は,学校で行われている面白そうな授業にも積極的に参加し,今回紹介したEgakuという授業に出会いました.これまで美術は難しそうと考えており,美術とはかけ離れた生活をしていました.採択者または応募者の皆様には,考え方を変えるきっかけというのは,皆さんの身近にありますので,積極的に参加していただけたらと思います.